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こんにちは、fukumomo3_Photo(@fukumomo8_com)です。
待ってましたの夏休み。
小学生だけど、毎日が本気で忙しい。
朝の3時に起き、懐中電灯と虫かごを持って、三本木へと走る。
家から自転車で数十分。用水路の脇に自転車を止めると、まだ誰も来ていないのがわかる。
誰かが先に来ていれば、必ずそこに自転車があるからだ。
野良犬・黒と少年の釣り日記

第二話:三本木と錦鯉とニワトリの家
待ってましたの夏休み。小学生だけど忙しい。朝の3時に起きて懐中電灯と虫を入れるカゴをもって三本木に走る。家から自転車で数十分のところだ。用水路の脇に自転車を停めるとまだ誰もきていないのがわかる。誰か来ていれば自転車が止まっているからだ。ワクワクしながら茂みの中の三本木を目指す。三本木とは、一本の木が枝分かれして三本に伸びてる様子からこの名を誰かがつけた。三本木に到着する。懐中電灯を照らすとカブトムシやクワガタが樹液を吸っている。「やった!」と心のなかで大声で叫ぶ。「早く来てよかったな!流石三本木は違うわ」と、早起きした自分と三本木を褒めながら、大量の虫達を虫カゴに閉じ込めた。
自宅に帰り選別をする。カブトのオスは高い値が付くので丁寧に扱い、メスは段ボール箱に入れて隅へ。今日は、ノコとヒラがいたので上機嫌だ。しばらくするとニワトリがソファーでテレビを見ている家のお友達が自転車のベルで私を呼んだ。あわてて選別をしていつもの箱に詰め替えて、お友達のところへ走る。「今日!早かったね!」と開口一番自分が三本木に一番に到着しなかったことを悔しがった。そう、三本木はカブトムシの集る木で、二人の秘密の場所なのだ。誰かがつけたといったが、お友達が三本木と名付けたのだと思う。お友達は、もう一本の木である二本木のところを先に回ったので私が今回は勝てたようだった。
お友達の自転車のテールランプを眺めながら走る。お友達の自転車はカッコよくてテールランプが光るのだ。いつも後ろを走りながら羨ましく見ていた。いつもの鳥と熱帯魚を販売しているお店に到着した。このお店は、夏になると子供達からクワガタやカブトムシを買い取ってくれるのだ。今考えると違法ではないかと思うけど、あの時代は、そんなことより経済を回すことが重要だったし皆ハングリーだったと思う。今日の売り上げは、今期最高額を記録した。お金を受け取りグッピーの新種や新入荷の鳥さんを観察する。お友達は早速手にしたお金で、新種の熱帯魚を買っていた。これが、経済を回すということなのだと、このときお友達から教わった。
ラジオ体操をする子供達に手を振りながら家に帰る。家に帰り魚釣りの道具の入ったリュックを背負う。自転車をいつもの秘密の場所へ。今日は、遅いので用水路の吹き出し口からスタート。座って仕掛けを用意するころに現れる。黒だ。遠くから走ってきて、私の周りを三回ぐるりと走ったあと顔を目がけてジャンプしてくる。ワンともキャンとも吠えないけど、「まってたよ〜!」っていつも聞こえる気がした。いつものあいさつも終わると、黒は横に座って私の魚釣りを見ている。横になったりするのではなく、座って待つのだ。
「リンリン」お友達の自転車のベルの音だ。振り向くとリトラクタブルのヘッドライトを点灯させたお友達の自転車が見える。明るいのに点灯しているのは、自慢なのだと思うが、ただただ羨ましかった。「どう?」釣果が気になるようだ。お友達は新しく仕入れた新種のグッピーのセットが忙しかったので、この時間になったことを、ちょっとだけ心配した様子でビクの中を見る。何も入っていないビクを見て安心したように、ちょっとだけ離れた場所で竿をだした。
お友達の第一投目。いきなりのアタリからのヒット。そう、お友達は、ものすごく魚釣りが上手なのだ。いつも、私は何も釣れないか、小さなフナかハヨが釣れるぐらいで終わる。お友達は、カブトムシの売り上げがいいからか、私より高価な竿を使っている。しかもリール付きである。私のは普通の延べ竿なので、きっとこのサイズがつれたら折れるか糸が切れる。黒がお友達のところへ走っていき応援する。私も自分の竿をあげて、お友達の自転車からタモを持ってきて取り上げる準備をしてまつこと数分。錦鯉のはっきりとした姿が見えてきた。30センチを超える大物だ。お友達がタモに合わせて魚の頭を入れる。それに合わせて私はタモを持ち上げた。河原で錦鯉がビチビチと跳ねる。お友達は、手際よく持ってきたビニール袋に水を入れて、錦鯉を袋に入れた。黒は、喜んでいるのかびっくりしているのか、ずっとピョンピョンと跳ねながらくるくると私たちの周りを回る。そして、ビニール袋に入った錦鯉は、お友達の自転車の後ろについた大きなカゴの中に入れられた。
お友達の家には、大きな池がある。その池に、この30センチを超える錦鯉は放流される。お友達が、急いで錦鯉を持ち帰った後、次は私の番だと意気込んで、竿を出したが、数時間経ってもアタリも何もなく時間だけが過ぎる。黒は、最初こそ私の顔を見上げ、「がんばって!」と応援してくれていたが、今は、横になって寝ている。竿が悪いわけでもなく、餌が悪いわけでもない、きっと私からは、釣りたいといった気持ちが釣竿から、釣り糸、釣り針、餌に伝わり魚が警戒しているのだ。お友達が魚釣りが上手なのは、きっと魚の気持ちを知っているからだと思う。そんなことを考えながら、仕掛けを変えたり場所を変えたりする。しかし、この日はあの錦鯉が最後で、なにも釣れなかった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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