おっさん犬とふたり旅|第二話:佐渡島への妄想と期間限定主夫のキッチン

おっさん犬とふたり旅|第二話:佐渡島への妄想と期間限定主夫のキッチン 伴侶動物コラム&体験談
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こんにちは、fukumomo3_Photo(@fukumomo8_com)です。

名古屋から連れてきた三分割のシーカヤックを、ついに作りはじめた。

理由は、アパートのベランダでは作り切れなかったからだ。

4ミリ厚の合板で作られたキットのシーカヤックをガレージに並べて、ライムと二人、腕を組んで眺める。

ちなみに、ライムは腕を組んでいない。

完成したら、ライムと一緒に佐渡島まで漕いでいく予定だ。

おっさん犬とふたり旅

第二話:佐渡島への妄想と期間限定主夫のキッチン

名古屋から連れてきた三分割のシーカヤックを作る。連れてきた理由は、アパートのベランダで作り切れなかったからだ。今考えるとアパートのベランダで作ろうと考えて実行した自分を褒めたい。4ミリ厚の合板で作られたシーカヤックをガレージに並べてライムと二人腕を組みながら眺める。ちなみに、ライムは腕を組んではいない。完成したら佐渡島まで漕いでいく予定だ。この予定は、私の頭の中の妄想が膨らみすぎて、現実に現れただけのことで、実行するかどうかは、完成しないとわからない。コクピットが完成に近づくとライムが寄ってきたので、ひょいと持ち上げてコクピットに乗せる。ニコリと笑いこちらを見上げてシッポを振る。

シーカヤックが完成したらライムと佐渡島まで漕いでいくので、ライム用のライフジャケットを購入した。泳げるかどうかわからないし、犬がライフジャケットを着ている姿を見てみたかったから。ライムは、服を着せても嫌がらないので、ライフジャケットも当然嫌がらない。それどころか、大人しく袖を通しやすくする為ちょいと片足を上げる。これは、人に話すと「はいはい、かわいいね〜」と信じてもらえないのだが、本当に手を上げて袖が通りやすくするのだからしょうがない。ライフジャケットも全く嫌がらないで、きてくれたのだが、問題が発生した。

ライムの息子の位置とライフジャケットのバンドが、ちょうど先っぽに当たり、ちょっと違和感があるらしいことだ。バンドを閉めるとこちらを見上げ「あ・・ちょっとしめすぎ」と切ない顔をしながらまんざらでもない顔をすることから気がついた。擦れて腫れたらかわいそうなので、ちょっと加工して息子の頭ではなく元らへんで締めれるようにした。きっとライムの息子が必要以上に大きいことが問題だったと思う。

ライフジャケットを着た犬と未完成のシーカヤックと新品のパドルが並ぶ。天気は上々である。この時の私の仕事は、期間限定主夫だった。このことから時間はあるので、ゆっくりとアパートのベランダでは、窮屈で作りにくかった箇所を丁寧に作りあげる。丁寧に作り上げると書くと、とても匠の技のように思えるだろうが、シーカヤックを作るのも舟を作るのも初めてだ。ベニアで作るシーカヤックのキットなので、それほど難しい作業ではないが、海で浮かべることを考えると、この私も少しは真剣に作る。いつもなら、説明書に書いてある、めんどくさそうな作業は、自分の解釈で無くしたり、見なかったことにしたりするのだが、この時は、わりと真面目に作った。

作業は午後四時ぐらいに終わらせて、ライムといつもの河原に遊びにいく。誰も来ない、車でも入るのをためらうような道を進んだ先にある河原。ライムのリードを外して、私は車のハッチを開け、そこを椅子がわりにして座りライムを監視する。ライムは狂ったように走り回り、私の投げた棒切れをダッシュして取りに行き探して見つかると、急いで私のもとに戻ってきて、私の顔を舐める。といった妄想をするだけで、ライムはリードを外しても、どこにも行かないし、そもそも走ったところを見たことがない。走るような雰囲気を感じたことはあったが、それも一瞬で「あかん、疲れる歩くよ」といった顔をして歩く。別にどこか悪いわけでもなく、健康診断では、歯槽膿漏以外は問題がないと診断されている。きっと歯槽膿漏からくる疲労なのかもしれない。

一度は、手術を検討したが、医者と相談した結果年齢のことを考えると、歯槽膿漏の手術は、リスクの方が高いとのことだった。施設の人もわかっていたようで、最初にその説明はあった。しかし、医者から直接聞くとちょっとだけ切ない。犬や猫などの伴侶動物は、飼い主以外の人を知らない。人ならば、親が嫌なら自立して独立して自分の好き勝手に生きることができる。犬や猫は、自立して逃げだせば、また施設に入るか、最悪は死だ。残念ながら日本の法律では、物なのだから。飼い主以外誰も守ってはくれない。などと難しいことや、今後のことを考えながらライムと散歩しない散歩をして川の流れを歯槽膿漏のおっさん二人で楽しむ。

ガレージに帰りライムを自作のロッキングチェアーに座らせる。ガレージキッチンと私が名付けたキッチンで晩御飯の用意をする。なぜ、ガレージキッチンなのかは、ガレージの中にキッチンがあるからである。きっと誰もイメージできないかもしれないが、ガレージの中で毎日キャンプをしていると想像してもらうとわかりやすい。実際に使っているコンロは、コールマンのツーバーナーだ。このコンロはケロシン用に改造してあって、ホワイトガソリンではなく灯油を気化させて燃焼させている。改造は簡単で、ガスの出るところのプレートの枚数を増やして調整するだけ。問題は、最初の加熱にバーナーが必要なこと。そう、私以外このコンロを完全燃焼させることができないと思うぐらい特殊にしてあるのだ。

相方の大きなミニの排気音が聞こえる。ライムの耳が微妙に動く。晩御飯のサインだ。小皿に数点の作り置きのおかずを盛り付けて、ガレージハウスの中のリビングで食事をする。ライムは、お気に入りの柔らかいいつもの缶詰を食べる。食べる姿を見ると、嬉しくなるのは、主夫の特権だろう。期間限定主夫をやらせてもらって気がついたことがある。それは、母の大変と喜びと心配事だ。きっと毎日私達のことを考えて食事を作ったのだろう。きっと食べる顔を見て幸せを感じただろう。そして、同じぐらい調子の悪い時は、心配しただろうと思う。人は、経験しないと本当のことは、わからないし、見えない。この期間限定ではあるが、母親と同じことではないが、ままごとみたいな期間限定主夫をやれていることに、ライムと相方の顔を見ながら感謝した。ありがとう。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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